類友

「会社の男子トイレが臭い。それでも今はだいぶ良くなった」と男子トイレを率先して掃除するアラ還は言います。原因は、前社長のウンコが臭かったから。前社長がいなくなったことで男子トイレの環境が改善されたっぽいのですが、前社長といえば南仙台界隈ではおバカさんで有名で、和風レストラン 南部屋敷を南部百姓屋、エナメルシューズをエメラルドシューズ、デパ地下をデパカチ、例を上げると枚挙に暇がないのですが、そんな前社長の周りにはやっぱり似たような人がたくさん集まるのです。

社員旅行でハワイに行く2~3日前、常務の奥さんがぎっくり腰になった為に常務は社員旅行に参加できなくなってしまいました。1名分のキャンセル料を払うのを避けたかったところ、前社長と酒を飲むことだけで仕事を繋いできた広告代理店の塩釜さんに白羽の矢が立ちます。前社長の「一緒にハワイに来れば広告の仕事全部やるぞ」にテンション爆上げの塩釜さんは、先一週間の仕事を全部キャンセルして空港に現れました。そして業者よろしく、前社長の為にハワイ旅行中は鞄持ちをするのですが、この旅行中にラジオでも話したあの事件を塩釜さんは巻き起こすのです。

前社長が風俗好きなのも塩釜さんは熟知しています。しかしここはハワイ。一時停止を無視して警察に減点された際に、「普通地元の人間捕まえますかね?オレ地元っすよ?」と謎ルールを警官相手に熱弁していた塩釜さんの理屈はハワイでは通用しません。だからそこは謙虚に、駅前のロータリーに停まっているタクシーの運ちゃんに風俗の優良店を聞こうと考えました。帰国子女で休みの日はボランティアで英会話を教える塩釜さんは、窓をコンコンして「ファックミー!ファックミー!」と。当然そんな変態を相手にする運ちゃんはおらず、前社長の為にと聞いて回るうち、駅前のロータリーから車がいなくなるということが起きました。これが戦慄の塩釜ファックミー事件です。

そしてハワイから帰ってきた塩釜さんは、うちの広告に関する仕事が全部貰えるものだと思って前社長に話を振ると、「そんなこと言ってねぇ」と斬り捨てられ、キャンセルした一週間分の売上をただただ逃しただけになってしまいました。しかし、前社長と塩釜さんの友情はその後も続き、前社長が仕事を辞めて普通の人になると機嫌を取っても何の意味もないことに気付いた塩釜さんは、裏で「なんで社長でもないのに飲みに付き合わなきゃいけないんだよ。割勘だったら行かないよ」と愚痴っていたそうですが、業者ならお前が出せよ、なに客の会社の金で毎週金曜に飲みに行ってんだよ、と思うのは僕だけではないと思います。結果、酒だけで繋がっていた塩釜さんとうちの会社との関係は、前社長が辞めたことで終わりを迎えたのでした。

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この記事を書いた人

東北の某都市の零細企業で働く窓際びんびんサラリーマン。
幼少の頃から霊感の強い母方実家の人間や幽霊屋敷に住む友人などに囲まれて過ごすが、本人に霊感なし。
代表作「ボウィンマンの一言物申す」

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