シュタインズ澤部

摩訶不思議な事がありました。摩訶といっても男性器を持続するアレの事ではございません。何年か前に寿司屋に行ったときの事なんですが、そこはいつも行く激安回転寿司ではなく、目の前で握ってくれるお店です。握ると聞くとすぐに金玉を想像する人が多いと思うんですが、寿司屋ですから握るのは寿司です。恐らくパチスロで万枚を出した記念に行ったのでしょう。澤部みたいな顔をした大将にサーモンを頼んでいると「まん彦さんですよね?」と大将が言いました。たしかに僕はまん彦なんですが、はて この澤部は何で僕の名前を知っているのでしょう。

ほら~ボクボク~みたいな顔で「小さい頃に遊んでくれたじゃないですか~」と澤部は言います。しかし、そんな記憶は一切ございやせん。前にも書きましたが、近所に西成区民のような顔の友達がたくさんいたマンモーさんとは違い、僕の近所に子供はおらず、僕はいつもオクヤマのチラシの裏に絵を描いて遊んでいました。澤部の記憶違いだと思いましたが、僕の名前は合っている。こりゃ記憶が混同していて、他の誰かと遊んだのを僕と遊んだのだと勘違いしていると思ったのです。

しかし「ドッジボール強かったですよね?」たしかに得意だった。「ちょっと横投げっすよね」たしかにちょっと横投げだ。しかしマジで遊んだ記憶がない。う~んと首を捻っていると「うち吉野寿司です」それも知らん(後で親に聞いたら昔近所にあった)。「すまん、全然わからん」と言うと、澤部は「勘弁してくださいよ~」と言いながら近くにいた弟子に怖い顔で指示を出していました。

帰り際に澤部がレジに来てくれて、レジのおばちゃんに何か言うと「あ~ハイハイ」と金額が訂正され、従業員価格、恐らく原価に近い価格にしてくれました。「あ…申し訳ない」と頭を下げると「また来てください」と澤部は笑顔で応えてくれました。

その後も何回か行ったんですが、二度と澤部を見ることはありませんでした。そこで考えました。あれは澤部佑でも寿司屋の妖精でもなく、平行世界の人間なんじゃないかと。彼は小さい頃、近所のちんまん少年にたくさん遊んでもらったのでしょう。恩返しに高い寿司を安価でご馳走してくれたのでしょう。ザ フライのような転送装置で僕の前に現れてくれたのでしょう。ザ フライよろしく転送装置に偶然にも澤部佑が紛れ込み、転送された先で澤部と同化してしまったのでしょう。

ここまで読んでくれた皆さんはもうお気づきかと思います。「その後も何回か行ったんですが」の件で毎回満額支払ったことを。澤部がいるからと調子に乗って凄い金額になったことを。支払いの時に澤部がいないか厨房の奥をめちゃくちゃ覗いたことを。店を出て「ありえね~よ~」と吐き捨てたことを。毎回そうやって天国預金を減らしていることを。

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この記事を書いた人

東北の某都市の零細企業で働く窓際びんびんサラリーマン。
幼少の頃から霊感の強い母方実家の人間や幽霊屋敷に住む友人などに囲まれて過ごすが、本人に霊感なし。
代表作「ボウィンマンの一言物申す」

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