江戸時代から語り継がれてきた本所七不思議。

現在の東京都墨田区界隈を中心とした不可思議な現象をこう呼びます。

実際には「七つ」どころではなかったようですが、メインの扱いを受ける「九つ」の話と、地元に生きる本所七不思議を紹介していきます。

本所七不思議とは?

灯篭の画像

江戸時代に本所と呼ばれる一帯がありました。

今の東京都墨田区南部、両国、錦糸町、駒形、業平を含む地域です。

この本所で語り継がれてきたのが、「本所七不思議」と呼ばれる、その地域で起こった不思議な現象をまとめたものです。

「七不思議」とはいうものの、「江戸往来」に寄稿した松川碧泉によると、本所七不思議に良く登場する9種以外にも「入江町の時無し」「割下水のほいかご」「梅村邸の井戸」「駒止石」「亀戸の逆さ竹」「幽霊橋の下駄の音」「吉良邸址の怪」などが挙げられているので、15種以上の話があったということになります。

七不思議の中に、「置いてけ堀」と「片葉の葦」の2種はいつも含まれますが、それ以外の5種は特に決まっていないようで、語られる時々で違うようです。

「置いてけ堀」

本所の川や堀では魚が良く釣れたそうで、ある日男が堀で釣りをしていると、その日は非常に良く釣れました。

夢中になって釣っていると、すっかり日も暮れ、魚籠もいっぱいになっていたので、さて帰ろうと思っていると、どこからか「おいてけ~おいてけ~」と恐ろしい声が聞こえてきました。

恐ろしくなった男が慌てて逃げかえると、あれほど釣れたはずの魚は一匹もいなくなっていました。

「片葉の葦」

本所の三笠町にお駒という美しい娘が住んでいました。

近所に住む留蔵という男がお駒に熱を上げますが、お駒は一向に振り向きません。

怒った留蔵は、家の用事で外出したお駒に襲い掛かり、片手片足を切り落とし堀に投げ込んでしまいました。

それ以来この堀には、片方しか葉がない葦が生えるのだそうです。

「馬鹿囃子」または「狸囃子」

真夜中になると、どこからともなくお囃子の音がしてくることがありました。

近くで聞こえたと思ったら遠くで聞こえてきます。

いったいどこから聞こえてくるのかと音をたどってみると、だんだんと自分がどこにいるのかわからなくなり、夜が明けてみると全く知らない野原にいるのでした。

「送り提灯」

夜更けに提灯を持たずに歩いていると、前方にポツンと提灯の灯りが見えてきました。

その提灯を目指して歩いていきますが、行けども行けども追いつけないそうです。

「足洗い屋敷」

ある旗本屋敷での話です。

深夜になると「足を洗え!」の声と共に、天井から血まみれの大きな男の足が突き出てきます。

きれいに洗ってやると、足はおとなしく引っ込みますが、洗わないと怒って暴れまわり、天井をあちこち踏み抜いて壊すそうです。

「燈無蕎麦(あかりなしそば)」または「消えずの行灯」

本所南割下水あたりに、いつ行っても灯りもなく、誰もいない屋台の蕎麦屋がありました。

夜が明けるまで待っても主が現れることはなく、気を利かせて行燈の火をつけようとしてもつきません。

あきらめて帰るのですが、後で必ず不幸な目にあうということです。

これには逆の話もあり、屋台に誰もいないのに灯りだけはついていて、訪れた人が不幸になるという話です。

「送り拍子木」

火の用心の夜回りが、拍子木を鳴らしながら歩いていると、どこからか拍子木のカチカチいう音が聞こえてきます。

まるで自分の後をついてくるようなのですが、振り返っても誰もいないそうです。

「落葉せぬ椎」

大川端の大名松浦家の上屋敷には、大きな椎の木がありました。

この椎の木は、どんなに強い風が吹いても一枚も葉が落ちることがなかったそうです。

「津軽の太鼓」

南割下水に弘前藩津軽越中守の上屋敷がありました。

火事の際、大名家では通常火の見櫓にある板木を叩いていましたが、この屋敷の火の見櫓には何故か太鼓があり、火事の時にはこの太鼓を鳴らしたそうです。

様々な媒体で登場する本所七不思議

浮世絵のイメージイラスト

本所七不思議は、三代目歌川国輝(自身は明治時代の浮世絵師)によって浮世絵に描かれるなど、江戸庶民に人気の怪談・奇談だったのではないかと思われます。

七不思議中一番人気ともいえる「置いてけ堀」は、落語のネタになり古くから親しまれていましたし、映画では1937年に、「本所七不思議」として怪談映画が制作され、1957年には「怪談 本所七不思議」としてリメイクもされました。

幼少期を本所で過ごした芥川龍之介は、自身について触れた作品の中で「狸囃子」を聞いたと書いています。

平成になってからも、宮部みゆきが「本所深川不思議草紙」という小説で、本所七不思議を扱っているなど、現代に渡っても広く親しまれています。

ちなみに「置いてけぼりをくう」などの慣用句の「置いてけぼり」は、「置いてけ堀」が語源なのだそうです。

地元墨田区に愛される本所七不思議

河童の画像

本所七不思議の舞台となったと思われる場所では、説明書きがや七不思議にまつわるものが設置されています。

大横川親水公園には七不思議のレリーフがあり、置いてけ堀との説がある錦糸堀があった錦糸堀公園には、「おいてけ~」の声の主ともいわれている河童の像が立っています。

また、墨田区主催の本所七不思議関連のイベントも度々行われ、墨田区内の色々な場所で本所七不思議を目にすることが出来ます。

地元墨田区の人形焼き店では、本所七不思議の絵柄の包装紙が使われ、宮部みゆきの小説は、この包装紙に着想を得て書かれたそうです。

他にも手作りガラスの工場では、本所七不思議がモチーフのガラスのぐい吞みが製造、販売されるなど、地元の人たちに今なお愛され親しまれています。

まとめ

そもそも話が7つじゃない!など突っ込みどころが満載の「本所七不思議」。

「それが何か?」という話も多いですが、そこはご愛敬というものです。

そんな本所七不思議が、他の江戸七不思議に比べても有名で、今でも忘れられることがなかったのは、小説や映画の題材にに取り上げられたのはもとより、地域の人たちの地元愛によるものが大きかったのですね。

本所七不思議の画像

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AGENTこの記事をかいた人

ココシータ

怖い話、都市伝説、妖怪が好きなあまり、小学生の夏休みの自由研究で妖怪のことを調べ、挙句の果てに水木しげる先生にお手紙まで出してしまいました。 ただし基本ビビりなうえに霊感は全くないようで、飼い犬が何もないところをジッと見ていると、まず虫の心配をする有様です。