日本古来より海女が身に着けるとされていた「セーマン・ドーマン」のお守り。
そのルーツはいったどこからやってきたのか。
その意味をたどると意外な過去に行き着く!
そこには「陰陽道」と西洋魔術との出会いがあった!?
海女に伝承されるセーマン・ドーマンというお守りとは?
今回は楽しい海のシーズンを霊的に快適に過ごせるように日本古来から伝わる海女の護符をご紹介いたします。
水難事故は霊的作用や海に潜む魔物によって引き起こされると昔の人たちは考えていました。
そうした海や水場の魔物たちを追い払うための護符として海女たちが身に着けたのが「セーマン・ドーマン」。
このお守りは二つのマークを組み合わせて「ひとつの護符」とされています。
古く伊勢志摩の海女たちや静岡県地方で多く使用されていたとされるこのお守りは、別段お守りとして形どったものではありません。
海女たちが、彼女たちが潜水の際に身に着ける衣服にその形を縫い付けたり、描いたりしていたようです。
また、現代においても、潜水服の裏側に記したりしている海女の方もすくなくないとか。
では具体的的にはどんな印だったのでしょう?
一つは「セーマン」と呼ばれる星型のマーク。
晴明桔梗印とも五芒星とも呼ばれる「星型」の印と、「ドーマン」と呼ばれる格子の形をしたマーク。
格子のマークは「九字の印」とも呼ばれ安倍の晴明の宿敵、芦屋道満が使用したとされています。
この二つのマークを組み合わせたものが「セーマン・ドーマン」であり、セーマンだけでもドーマンだけでもいけません。
二つのマークが並列されてこそそのパワーは発揮されるのです。
「セーマン・ドーマン」そのパワーの効果
海女が潜水をしているとき、ふと横をみると自分そっくりの海女がいて、微笑みながら「あわびをわけてあげる」
もしくは「アワビのとれる場所につれていってあげる」と寄ってくる・・・
そしてそれに応じると、途端に息が続かなくなって死に至る・・・
これが海女たちに恐れられていた魔物「ともかづき」と呼ばれる妖怪なのだそうです。
そして、その魔物を追い払うためにもこのドーマンセーマンは有効だったといいます。
五芒星の形をした星型は陰陽道において自然界を形成する「五つの要素の作用」を表しているとされています。
要するにこの星型そのものが「調和」をあらわしているのです。
そしてドーマンは「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」の九文字を縦横に配置し、格子の目を作ることで、魔物を脅します。
魔物は格子の目が、たくさんの目玉に見えて、恐れるとされているのです。
魔物は、もともと「調和」を嫌います。
魔のつけいる隙は「不調和」であり、「隙間」なのです。
そういえば、「心の隙間」や「調和のとれていない状態」は魔が介在しやすい状態かもしれません。
ですから、調和のとれたものを見せるとき
魔はおのずと退散するのです。
安倍の晴明桔梗印と西洋ペンタグラム
さて、「セーマン・ドーマン」が安倍晴明の桔梗印と芦屋道満の九字の印だけが組み合わさったものなのでしょうか。
筆者は、その「セーマン」という言葉に「晴明」がなまったもの・・・という解説だけでは納得しませんでした。
海女・・・セーマン・・・この語句を聞いたとき、筆者の中にひらめいたのは「seaman」(船乗り)でした。
そして、西洋黒魔術におけるペンタグラム。
これを「セーマン」(seaman)としたとしたら?
このSEAMANのドイツ語読みが「セーマン」です。
さらに、伊勢志摩の海女たちの間で恐れられていた「ともかづき」と呼ばれる
自分そっくりの妖怪・・・。
そう、ドッペルゲンガーを思ったのは筆者だけでしょうか。
ドッペルゲンガーも自分そっくりの存在で、その存在と出会ったとき、人は落命するといわれています。
ドーマンとエルサレム十字
さて「ドーマン」こと九字の印。
この格子型の印と酷似した印に「エルサレム十字」と呼ばれる、やはり縦横の線を格子に組み合わせた十字架が存在します。
これはペンタグラムとは違い、純粋に聖なる印とされています。
魔的な力を秘めたペンタグラムと対をなすのが、このエルサレム十字であり、東洋的「セーマン・ドーマン」の対なす裏の面としての「西洋的ペンタグラムとエルサレム十字」がこの二つの印に潜んでいたとしたら・・・。
「東洋と西洋」「黒魔術と十字架」「晴明と道満」「神道と仏教」、すべて相反する立場が並列していると解釈できます。
これはいったい、何を意味するのでしょうか。
そう、これこそまさに「陰と陽」をあらわしているといえます。
「陰と陽」二つの異なる世界や作用が並列して存在するときそれは魔が入りこむ隙のない「調和のとれた状態」と考えられます。
この『完全な状態』を魔物に示すことによって、魔物たちは、己たちの不完全さを恥、完全の前にしり込みし、おのずと退散していくのです。
古の日本人は、率先して、海外からの異文化を独自の価値観にそった形で取り入れていったと考えられるのではないでしょうか。
むすび
「セーマン・ドーマン」の護符と隠されたその由来、そしてパワーはいかがだったでしょうか。
これから夏のシーズン。
皆さんも、このセーマン・ドーマンを現代風にアレンジして取り入れてみてはいかがでしょう?
ペンタグラムと十字架のペンダントをヘッドにしたアクセサリーを身に着けてみるのも面白いかもしれません。
ただし、ポイントは、「陰と陽」ですから、どちらか片方だけでは「セーマン・ドーマン」にはなりません。
必ず「一対」にする。
これがポイントです。
イヤリングに星型なら、ペンダントに十字架。
こんな具合です。
海女を守った「セーマン・ドーマン」を身に着けて安全な夏をお過ごしください。
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