妖怪研究家のチン・マン彦です。
今回は妖怪のなかでも、すご~く怖い妖怪をジャンルごとに集めてみました。
日本はユニークな妖怪が多いので、怖い妖怪は逆に珍しいんですよ。
チンマン画伯の絵と共に、5つのジャンルにわけて紹介します。
ジャンルは
- 海辺に現れる怖い妖怪
- 女の怨念が怖い…妖怪
- 朝廷が討伐隊を組むほど怖い妖怪
- 理不尽に怖い妖怪
- 会うだけでアウトな怖い妖怪
それではいきましょう!
海辺に現れる怖い妖怪3選
海に関係する妖怪はたくさんいますが、そのなかでも危険な妖怪を集めました。
紹介するのは、
- 牛鬼
- 濡れ女
- 船幽霊
それではくわしく見ていきます。
1:赤ん坊に興奮するロリコンホルスタイン|牛鬼(ぎゅうき)
出会った人間を襲う怖い妖怪です。
名前からして、陸上の妖怪のように思われがちですが、おもに海から現れます。
次に紹介する濡れ女とコンビを組んでいるという珍しい妖怪で、濡れ女から赤ん坊を渡されたら放置して急いで逃げてください。
早くしないと牛鬼が凄い勢いで襲ってきますよ。
2:美人局の第一人者 騙すの大好き|濡れ女(ぬれおんな)
↑で紹介した牛鬼とコンビを組んでいます。
人が海辺を歩いていると、濡れ女が赤ん坊を抱いて全身ずぶ濡れで現れます。
そして、預かってほしいと言って赤ん坊を渡してきます。
赤ん坊を渡すと、濡れ女は海にざぶざぶ入っていっちゃいます。
↑でも言いましたが、入れ替わりで海から牛鬼に襲われますから、赤ん坊は預からないこと。
赤ん坊は時間とともに石に変化して、しかも手に吸い付きます。
もたもたしているうちに牛鬼の突進で殺されてしまいます。
親切心で殺されるんだから、たまったもんじゃありません。
3:その格好、ドリフターズ以来 |船幽霊(ふなゆうれい)
全国各地の海に現れます。
海で命を落とした亡霊たちが仲間を増やすために舟を沈めてきます。
船幽霊の有名なセリフで、「柄杓を貸せ」というものがあります。
その言葉にしたがって柄杓を貸してしまうと、船に水を入れられて沈没させられてしまいます。
助かる方法は一つ。底の抜けた柄杓を貸すこと。
海釣りに出かける方がいらっしゃったら、底の抜けた柄杓は忘れちゃいけませんよ。
女の怨念が怖い…妖怪3選
女の怨念は人を妖怪に変化させます。
紹介するのは、
- 清姫
- 橋姫
- お岩
それではくわしく見ていきます。
1:坊主狙いのパニックストーカー|清姫(きよひめ)
紀州国真砂の商屋の家に、清姫という娘がいました。
そこへ安珍という若い僧が熊野詣の途中でこの家を訪れます。
清姫の父親は「あの僧がお前の結婚相手だ」とからかいました。
清姫はそれを信じ、数年後、安珍に結婚を迫ります。
安珍は「熊野詣の帰りに迎えにくる」とその場を誤魔化し、逃げてしまいました。
いつまで待っても安珍は来ません。
清姫は近くの木に登って安珍を探すと、逃げる安珍を発見。
安珍を追いかけるうちに、清姫は蛇の化け物になっていました。
安珍は道成寺の鐘の中に逃げ込みましたが、清姫は鐘の周りに蛇身を巻きつけ、燃やしてしまいました。
火は二人を焼き尽くしてしまったのです。
ストーカーですね完全に。
2:丑の刻参りの発案者|橋姫(はしひめ)
橋姫は橋の守護神です。
おっぱい丸出しです。
しかし非常に嫉妬深い女神であるといわれています。
特に女性に対しての嫉妬は凄まじく、橋姫がいる橋は、嫁入り前の娘は渡ってはいけないとされています。
そして、「宇治の橋姫」伝説は丑の刻参りの原型といわれています。
その昔、女が男に捨てられたことを憎み、男と恋敵を呪い殺そうとしました。
貴船神社の神様に「37日の間、宇治川に身を浸せば願いを叶える」と約束され、37日後、女は生きながら鬼へと変化しました。
怖いです。女性は怖いです。
3:全日本ホラープリンセス初代王者|お岩(おいわ)
現代のホラー界には貞子、伽椰子、富江と三人のヒロインがいますが、一昔前のチャンピオンはお岩さん、彼女です。
お岩は伊右衛門と結ばれますが、伊右衛門に惚れた若い娘、お梅が現れます。
お梅の親はお岩に毒を盛り、お岩の顔はただれてしまいます。
自分の顔にショックを受け、お岩は死んでしまうんですが、伊右衛門はろくでもない男。
やったーこれでお梅と結婚できると喜びます。
すぐにお岩は枕元に現れ、伊右衛門はお岩の首を切るんですが、ゴロリと床に落ちたのはお梅の首だったのです。
朝廷が討伐隊を組むほど怖い妖怪3選
人々を苦しめ、朝廷が動いたほどの危険な妖怪。
よっぽど大物ですよ。
紹介するのは
- 酒呑童子
- 九尾の狐
- 悪路王
それではくわしく見ていきます。
1:ちょいと一杯のつもりで飲んで|酒呑童子(しゅてんどうじ)
鬼の親玉です。
平安時代、酒呑童子と仲間の鬼達は、都から女をさらい、金銀財宝を盗み、人を殺すなど、悪行の限りを尽くしていました。
朝廷はこれの討伐に、土蜘蛛退治で有名な源頼光と頼光四天王を向かわせます。
一行は途中、鬼の身体の自由を奪う「神便鬼毒酒」を神の化身から貰い、酒呑童子のアジトに潜入しました。
歓迎を受け、酒呑童子と酒を飲む一行。
毒酒を飲んで動けなくなっている酒呑童子の首を頼光は一刀両断します。
しかし最強の鬼、首だけになっても頼光を襲ってきました。
それでも毒酒の効果は強く、頼光の刀の前に力尽きたのです。
2:またの名を美福門院|九尾の狐(きゅうびのきつね)
九尾の狐は、酒呑童子と並んで最強妖怪の一つとされます。
インドや中国で美女に化けて時の権力者に近づき、国を滅ぼしてきました。
8世紀頃に日本に渡り、玉藻前として鳥羽天皇に近づきます。
鳥羽天皇は不治の病に侵されるのですが、陰陽師である安倍晴明が占ったところ、鳥羽天皇の病は玉藻前の妖力であることが判明します。
正体を暴かれた玉藻前は東国の那須野へ逃亡します。
朝廷は討伐軍を編成し、九尾の狐を退治するのですが、九尾の狐は自分の屍を毒ガスが吹き出す大きな石へ変化させます。
その後、「げんのう」の由来となった(トンカチですね)玄翁和尚が杖で叩き割ると、ようやく成仏しました。
3:納豆のキャラじゃないよね? 悪路王(あくろおう)
悪路王は岩手県に伝わる妖怪です。
仲間の鬼達と、盗みや殺しなどで人々を困らせていました。
そこで朝廷は征夷大将軍として、坂上田村麻呂を遣わし、退治します。
茨城県の鹿島神宮の宝物殿には、悪路王の首像がまつられています。
これは、坂上田村麻呂が悪路王討伐の凱旋の途中で鹿島神社に立ち寄り、その首を納めたことに由来します。
妖怪というよりは、朝廷に服従しない逆賊だったのでしょうね。
蝦夷の王のアテルイと悪路王を同一視する説もあります。
理不尽で怖い妖怪3選
ちょっとそれはあんまりじゃない?
そんな妖怪集めました。
紹介するのは
- 鬼一口
- 狐者異
- 輪入道
それではくわしく見ていきます。
1:江戸時代のジャイアント白田|鬼一口(おにひとくち)
この鬼一口は、一口で人間を食べてしまう恐ろしい妖怪です。
男が何年もかかって口説いた女をやっと連れ出したんですが、その途中に雷雨となったので蔵に女を隠れさせました。
男は蔵の前で番をしていたのですが、雷雨が過ぎ去って蔵を覗くと女はいなくなっていました。
女は蔵の中の鬼に一口で食べられ、跡形もなくなっていたのです。
これは理不尽です。
男はこの女を落とすのにどれだけ苦労したことか。
最後まで気を抜くなということですね。
キャバクラのお姉ちゃんを連れ込むときは、部屋に入るまで注意を払って・・ヒヒヒ。
2:スカッとジャパン招待選手|狐者異(こわい)
「こわい」の語源になった妖怪、狐者異(こわい)です。
もう怖いです。
「絵本百物語」によれば、狐者異は高慢強情の別名だそうで、世間でいうところの無分別者のことだそうです。
生きているうちは法を無視して何者も恐れず、人のものまで取る(あぁ理不尽)
死んだ後も忘念執着の念で、仏法世法の妨げをなす。
絵は上半身だけですが、視線の先にはうどん屋の屋台があり、盗み食おうとしています。
みなさんの近所にも狐者異がいるんじゃありませんか?
万引きしちゃうお隣の貴婦人、ゴミの日を守らない大学生・・・あぁ狐者異!
3:灯台もと冬木 対岸の火事より台所の鍋|輪入道(わにゅうどう)
その姿を見ただけで、命を奪われる危険な妖怪です。
昔、京都に車輪の化け物が現れるという噂がありました。
ある晩、女が格子戸から外を覗いてると、牛車の車輪が一つだけ転がってくるのが見えました。
よく見ると、車輪の真ん中に顔があり、ちぎれた脚をぶら下げていました。
顔は「我を見るより汝の子を見よ」と言いました。
女は慌てて寝室で寝ている我が子を見ると、子供の足がちぎれてなくなっていました。
理不尽ですね。覗いただけなのに…。
会うだけでアウトな怖い妖怪3選
遭遇したらおしまい。
有無を言わさず逃げたほうがいい妖怪を集めました。
紹介するのは
- 縊鬼
- 姑獲鳥
- 絡新婦
それではくわしく見ていきます。
1:バー「魔の巣」でお待ちしております|縊鬼(いつき)
縊鬼は人を死に誘う妖怪です。
ある組頭が宴を開いたんですが、呼んでいた仲間が時間になっても現れませんでした。
遅れてやってきた仲間は「やむを得ない用事ができた」と帰ろうとします。
不思議に思った組頭が何の用かとたずねると「食違門で首を括る約束をした」と。
怪しんだ組頭は酒を飲ませ引き止めます。
詳しい話を聞くと、食違門の近くで呼び止められ、「首を括れ」といわれ、断れない気持ちになり、宴を断ってから首吊りをしようと考えていたとのこと。
ぼんやりしている人の心の隙間に入り込むのは「通り魔」と呼ばれます。
縊鬼も通り魔、喪黒福造も通り魔。
2:人妻モノもたまにはいいなぁ|姑獲鳥(うぶめ)
京極夏彦の百鬼夜行シリーズの一作目、「姑獲鳥の夏」でお馴染みの姑獲鳥です。
濡れ女と同じく、赤ん坊を抱いてほしいとお願いしてきます。
抱いてしまうと、赤ん坊はどんどん重くなり、重さに耐えきれなくて死んでしまいます。
会ったら運のつき、逃げましょう。
悲しい話ですが、妊婦が死んだ際に、母と子を分けて埋葬しないと、姑獲鳥になるといわれています。
3:京極堂「あなたが蜘蛛だったのですね」|絡新婦(じょろうぐも)
伊豆天城の浄蓮の滝には、絡新婦の伝説があります。
近くに住む人々はこの滝に近寄らなかったのですが、一人の木こりが滝に斧を落としてしまいます。
すると、女の声がして「これはあなたのですか?」
女が岩陰から半身を出して斧を手にしています。
「返してあげますから、ここで見たものは誰にも言わないでください」
しかし、木こりは酒に酔ってこの話をしてしまい、酒場で寝てしまうと、二度と起きることはありませんでした。
「金の斧、銀の斧」と雪女を足したような話です。
あんまし危なくねーじゃんって思いました?
絡新婦は気分によっては釣り人を滝に引きずり込むこともあります。
やっぱり会ったらアウトです。
まとめ
いかがでしたか?
日本にはユニークな妖怪が多い反面、出会ったら危険な怖い妖怪もたくさんいます。
みなさんも妖怪に出会ったら一目散にお逃げくださいね。
そして、お気づきでしょうか?
チンマン画伯が最後のほう疲れてきていたことを。
ヒヒ!!
コメント